ご近所に、ドンさんというわんこがいます。
いえ、いました。
ドンさんは天使になったので、過去形です。
ドンさんが、我が家のお向かいに来たのはいつだったでしょう。
捨てられていたところを、お向かいさんが拾ってくださったのです。
お向かいさんはその前に飼ってたわんこを亡くしたところだったので、「ドンは生まれ変わりだね」と、よく話しました。
実際は、ドンさん拾われた時点でそれなりにナイスミドルだったので、生まれ変わりってことはないんですけどね。
ドンさんは、とても賢い子でした。
ご近所の人たちが前を通っても絶対に吠えないけれど、知らない人が来たらちゃんと吠えます。
無駄吠えはしないし、ひとに噛みつくこともしません。
最初は、お向かいさんがドンさんを飼うことに反対していたご近所さんたち。
ドンさんが賢くて、番をしてくれて、子供と遊んでくれるのを見て、心が和らぎました。
「ドンがいてくれて良かったわ」
こんな言葉を、聞くようになりました。
あまりご近所さんとうまくいってなかったお向かいさんも、ドンさんを通じて、いつの間にか皆と楽しくお話しできるようになりました。
ドンさんが天使になったとき、ご近所の皆が集まりました。
焼き場に行く前に見たら、お供え物がいっぱいありました。
私がシナリオを書いた『姫と林檎にくちづけを』の主人公・片瀬真琴は、ドンというわんこを可愛がっています。
片瀬ドンのモデルは、もちろんご近所のドンさんです。
私達の思い出とゲームの中に、ドンさんは生き続けています。
ありがとう、ドンさん。
